枝の樹皮を環状に剥ぎ、幹につけたまま発根させてから切り離す――親木と同じ性質を受け継いだ苗を、挿し木より早く大きく仕立てられる伝統の繁殖技術です。
取り木(とりき)は、木の枝の樹皮を一部剥ぎ取って発根処理を施し、親木につながったまま根を出させてから切り離す繁殖方法です。挿し木のように根も葉もない状態から育てるのではなく、枝についた葉で光合成をしながら発根するため、活着率が高く、最初からある程度の大きさの苗が得られます。
種から育てるのと違い、花色や実付きなど親木の性質をそのまま受け継ぎます。
すでに育った枝を使うため、挿し木より短期間でボリュームのある株になります。
発根前は親木とつながったままなので、根が出なくても枝を失うだけで済みます。
取り木は生育が盛んな時期に行うほど発根が早く、成功率も上がります。落葉樹と常緑樹で適期が異なります。
新芽が動き出す3〜4月が適期。樹液の流れが活発で、剥皮後の発根が早い。
気温・湿度が高い梅雨時(6月頃)が最も成功しやすい。乾燥期は避ける。
よく研いだものを。切れ味が悪いと形成層が潰れて発根しにくくなります。
乾燥品をたっぷり水で戻し、軽く絞って使用。保水と発根の土台になります。
透明の袋やラップ。水苔の乾燥を防ぎ、発根の様子も外から確認できます。
ビニールの上下をしっかり縛って密閉するために使います。
ルートンやメネデールなど。発根までの期間を短縮し成功率を高めます。
太い枝や高い位置で作業する場合、枝が折れないよう支えに使います。
もっとも一般的な「高取り法」の8ステップです。庭木・盆栽・観葉植物まで、幅広い樹種でこの方法が使えます。
今年〜2、3年目の充実した枝で、太さは鉛筆〜親指程度、まっすぐで健康なものを選びます。あまり若すぎる枝は樹皮が薄く剥皮しにくいので避けます。
ナイフで枝を一周するように、幅 2〜3cm の間隔で平行に2本切り込みを入れます。縦にも1本切れ目を入れると剥がしやすくなります。
切り込みの間の樹皮をすべて剥ぎ取ります。剥いた後に残るぬめりのある薄皮(形成層)もナイフの背でしっかり削り落とすのが最大のコツ――ここが残ると再生してしまい発根しません。
失敗しやすいポイント剥いた部分の上側の切り口を中心に、発根促進剤を筆や綿棒で塗布します。省略しても発根しますが、期間が短縮され成功率が上がります。
たっぷり水を含ませて軽く絞った水苔を、剥皮部分を包むように厚さ 2〜3cm ほど巻きつけます。乾燥させないことが発根の生命線です。
水苔ごと透明のビニールでくるみ、上下の端を枝にぴったり密着させて紐でしっかり縛ります(俗に「ミイラ巻き」)。すき間があると乾燥・雨水の侵入の原因になります。
1〜3ヶ月ほどで、ビニール越しに白い根が見えてきます。水苔が乾いていたらビニールの端から少量注水し、直射日光が強い場合はアルミホイル等で遮光すると蒸れを防げます。
根が十分に回ったのを確認したら、根の塊のすぐ下でハサミやノコギリで切り離します。ビニールは静かに外し、水苔を崩さないまま鉢や庭に植え付けます。植え付け後しばらくは半日陰で乾燥に注意して管理します。
水苔+ビニールの「ミイラ巻き」の代わりに、ペットボトルを小さな鉢のように枝に取り付けるやり方です。透明なので水分量や根の様子が外からひと目で分かり、保水力も高いので水やりの手間が少なく済みます。太い枝や屋外で雨風にさらされる場所での取り木に特に向いています。
中に詰めた水苔・用土がたっぷり水を保つため、数日おきの水やりでも乾きにくい。
透明な壁越しに発根の進み具合を確認でき、切り離すタイミングを判断しやすい。
硬いボトルが枝をしっかり保護するので、太い枝や風雨の当たる屋外でも安定します。
ボトルサイズの目安:細い枝(直径1cm前後)は500ml、太い枝(直径2cm以上)は1.5〜2Lが扱いやすい。
ペットボトルの底を切り取り、縦に一本切れ込みを入れて開きます。さらに上下(キャップ側と底側)に枝の太さに合わせた半円の切り欠きを作っておきます。
剥皮と形成層を削る作業は04の②③と同じ要領で行います。その剥皮部分がボトルの中央にくるように、縦の切れ込みから枝を差し込んで取り付けます。
縦の切れ込みと、上下の枝を通した部分の隙間をビニールテープでしっかり塞ぎます。ここに隙間があると水分が抜けて乾燥してしまいます。
湿らせた水苔(または赤玉土とピートモスを混ぜた用土)を、ボトルの中にすき間なく詰め込みます。上部に水を注げる小さな口を残しておくと、後の管理が楽になります。
上部の口から定期的に水を注ぎ、中が常に湿った状態を保ちます。1〜3ヶ月ほどで、ボトルの内側に白い根が見えてきます。切り離しと植え付けは04の⑧と同じ要領です。
樹皮を一周すべて剥ぐと株元まで枯れ込みやすい樹種では、枝の片側だけをナイフで舌状(べろ状)に薄く削ぎ、そこに水苔を当てて発根させる方法が使われます。環状剥皮法よりやや時間はかかりますが、枝への負担が少なく安全です。
取り木はとても適応範囲の広い方法で、庭木・盆栽・果樹・観葉植物まで多くの樹種で行えます。目安として、発根のしやすさを●の数で示しています。
| 分類 | 代表的な樹種 | 発根のしやすさ |
|---|---|---|
| 落葉広葉樹適期:3〜4月 | モミジ・カエデ類、サクラ、ウメ、ハナミズキ、ライラック、フジ | |
| 常緑広葉樹適期:6月(梅雨) | ツバキ、サザンカ、キンモクセイ・ギンモクセイ、クチナシ、ツツジ・サツキ、シャクナゲ | |
| 果樹適期:初夏 | イチジク、ザクロ、ブドウ、柑橘類、ビワ | |
| 観葉植物通年(室内) | ゴムノキ(フィカス)、ベンジャミン、パキラ、ウンベラータ、ドラセナ、モンステラ | |
| 針葉樹舌状剥皮法推奨 | クロマツ・アカマツ、ゴヨウマツ、イヌマキ 上級者向け |